さて、前回の続きです。
(前回行いましたダイトの分析はこちらになります。)
戦略志向・競争優位性
前回も記載した通り、ダイトは戦略的に”絞り”を効かせた非常にユニークなビジネスモデルを採用しています。
①原薬商社機能
まず、製薬業界は特定のバリューチェーンに注力することが求められているという業界動向があります。
新薬メーカーはより機能性の優れた製品を生み出すために「研究・開発」に、後発医薬メーカーはよりローコストで生産するために「製剤」に注力することが求められており、その他の部分についてはできる限りアウトソースすることを志向しています。
「原薬」はまさにアウトソースが志向されている領域の一つです。
各医薬品メーカーは複数の製品を生産していますので、当然多くの原薬を一括で調達するニーズが存在します。
そこで「商社機能」として他社製品までを扱いラインナップを拡大し、競争優位性を高めているわけです。
(競合に対して、無理に単独で対抗するよりも、ダイトの商流に乗った方が儲かる仕組みを作っているわけです)
②受託製造
こちらは研究・開発に注力したい新薬メーカーがアウトソースしたい領域ですが、ここを取り込むことで自社の原薬開発に活用できるデータが数多く取得でき、且つ、自社品(後発医薬)でも使用する設備の稼働率を上げることができます。
③委託販売
逆にダイトがアウトソースしている機能です。
MRは高い専門性が求められることから、それだけ人件費が多くなります。
新薬メーカーでは自社品の効果や学術的な根拠など、後発医薬メーカーでは他社製品との差異などをしっかりと売り込まなくてはなりません。
そんな人件費が掛かるのであれば、そこはアウトソースしてしまいましょうというある種の割り切りで完全にアウトソースしています。
“絞り”の聞いたビジネスモデルのお蔭で、競合と他社と比較して高いROEを実現しています。
目標株価
最後に簡易的ではありますが、目標株価(ターゲットはFY19)について書いておきます。
前提
EBITDA Margin :FY2016値である17.9%が今後も一定と仮定
Net Debt :FY2016値である84億円が今後も一定と仮定
少数株主持分 :FY2016値である5億円が今後も一定と仮定
発行済み株式数 :2016年6月26日現在の12,519,064株が今後も一定と仮定
ケース
売上高成長率 :FY13-17のCAGRである7.1%、FY15-17のCAGRである5.8%、ゼロ成長の3ケース
EBITDA倍率 :2017年6月26日値である6.0x、競合平均と現在値の平均値である5.6x、競合平均である5.3xの3ケース(JCRファーマだけ異常値のため平均値から除外)
試算結果
最大ケースでは、3,201円と算出されました。
優れたビジネスモデルでありながら、マルチプルが競合よりも若干高いというのが足枷になっていますね。
仮に3,201円まで行くとしても現状から+29.4%ですので、モニタリングしながら下がったら買うというスタンスですかね。
繰り返しになりますが、個人的にはコンドーテックと似ていて非常にユニークなビジネスモデルだなぁと好印象な企業です。