経営コンサルの割安株分析

現役経営コンサルタントが中長期保有を前提に中小型株を中心に分析。自身の専門性や調査・分析範囲(能力)に限界がある中で、様々なバックグラウンドを持つ方々との意見交換を行うことで、割安株への投資を実現することが目的です。

ウエスコホールディングス(6091)企業分析②

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さて、前回の続きです。
(前回のウエスコHDの分析はこちらになります)

www.con-invester.com

株価

株価は約1年前から上昇に転じており、約1年間で60%程度株価が上昇しています。

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そでもなお、マルチプルはかなり低い水準にあります。

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上記は建設コンサルティング中堅企業のEBITDA倍率を比較したものになります。
業界全体として低い傾向にありますが、その中でも特にウエスコHDが低い状況です。
中堅各社の中で、FY15-16間は唯一好調という状況で、3ヵ年で見ても10%増収のオオバに続く2番手の増収結果となっています。

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市場動向

競合との指標比較云々はあれどやはり気になるのは企業として今後の伸びていくのか否かですね。

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オリンピック需要等で建設投資自体が伸びていることもあり、当然ながら建設コンサルタントの契約金額についても直近は上昇している状況です。

但し、ボーナスタイムにはいつか終わりがくるように、例に漏れず建設投資ボーナスタイムも近い未来に終わりが来ます。
ですので、ウエスコHDが既存の事業を続けていれば明るい未来はないと想定されます。
(こうした明るいシナリオを描き辛いことが当業界のマルチプルが低い原因でしょうか)

戦略志向

建設コンサルティング業界は、規模の経済が働きにくく、且つ参入障壁が低いため、複数のプレーヤーが乱立している状況です。(それこそ個人事業主として事業展開している人も多いと思います)

まぁ僕の職業である経営コンサルティングと同じで、利益を上げるにはただ単純に売上を上げる必要があり、売上を上げるには人員を増やすしかないといった構造です。
とは言え、人の増減員は需要ありきの話ですので、国内事業展開のみでは、中々規模の拡大が難しい現状があります。

そんな中で、競合各社は「海外事業強化」を掲げているわけです。
翻ってウエスコHDを見ると、飽く迄国内事業を充実させるというところに目線があるようで、海外事業についてはIR資料、プレスリリース等では一切語られていません。

発行済み株式数の30%を創業家や従業員持ち株会が保有していることで、市場からの圧力が少ないことも一つの要因かもしれません。
(※加納家が創業家)

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目標株価

最後に簡易的ではありますが、目標株価(ターゲットはFY19)について書いておきます。

前提

EBITDA Margin :FY2016値である8.1%が今後も一定と仮定
Net Debt :FY2016値である-54億円が今後も一定と仮定
少数株主持分 :FY2016値である0円が今後も一定と仮定
発行済み株式数 :2016年5月30日現在の17,724,297株が今後も一定と仮定

ケース

売上高成長率 :建設コンサルタント契約金額のFY14-16のCAGRである3.9%、FY12水準まで減少した時の-3.8%、ゼロ成長の3ケース
(まだオリンピックが決まる前で、且つ震災等の特需要因がなかったFY12水準まで契約金額が減る可能性を考慮しています)
EBITDA倍率 :2017年6月19日値である1.5x、競合平均と現在値の平均値である2.8x、競合平均である4.0xの3ケース(オオバだけ異常値のため平均値から除外)

試算結果

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最大ケースでは、514円と算出されました。

成長が期待できなくても、マルチプルが低ければ十分に上値余地があるという好例だと思います。
(仮にマイナス成長でも競合水準までEBITDA倍率が上がれば25%程度株価上昇する試算です)

但し、マルチプルが低いのには必ず理由があります
ウエスコHDの場合では、前述の株主構成からか資本効率が悪いという側面がありそうです。
前回記載した通り、年々Cashが積み増されており、投資Cashフローを見ても有価証券に投資している金額が最も多い様な状況です。

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その結果、競合とROEを比較すると圧倒的に低い状況です。

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とは言え、現状悪いということは伸びしろがあることの裏返しでもあります。
何らかのトリガーで株主還元を拡大する等、資金効率向上の一手が打たれれば、事業として安定しているので十分化ける可能性はあるかと思います。