先日、MBKパートナーズという韓国のPEファンドが上場させたコメダホールディングスについて分析を行いました。
その結果「収益性や成長性は魅力的だが、のれんという負の遺産を背負っている」ということが分かりました。
一方で「多額ののれんを背負うことはPEファンドに買収された以上当然であり、今の成長を維持できれば減損する必要がないため問題ない」とも述べました。
では、何故そもそもPEファンドに買収されるとのれんが発生するのでしょうか。
そもそものれんが発生する理由
のれんが発生するメカニズムは何も難しくありません。
買収した企業の「買収金額 - 純資産」がのれんとなります。
のれんとはバランスシートには載らない人材だとかブランド力だとかの総称とされています。
まぁこの際のれんの定義はどうでもいいです。とりあえずのれんなる物がこうやってバランスシート上に現れます。
純資産100億円の企業を110億円で買収するとのれんが10億円発生します。とても簡単です。
つまり、のれんが発生するということはPBR1.0倍以上で買収しているということになります。
"多額"ののれんが発生する理由
"多額"ののれんが発生するメカニズムは極めてシンプルで「自社と同じ大きさの企業を買う」ことが原因です。
正常な企業を買収する場合はのれんが発生するので、のれんの発生自体には何ら問題がありません。
ポイントは何を持ってして"多額"とするかです。
例えばトヨタがある小企業を大盤振る舞いで買収して、100億円ののれんを計上しても誰も見向きもしません。気にするのは財務部くらいでしょう。
従って、"多額"というのは絶対値ではなく、飽く迄自社の純資産と相対比較することで決まってくるのです。
PEファンドと"多額"ののれん
そうなると、自社を買うPEファンドのディールは多額ののれんを発生さぜるを得ないのです。
(厳密には①ファンドがSPCという新設会社に出資、②SPCが対象企業を買収、③SPCが買収した対象企業を吸収合併。というプロセスを経ます)
下記は2014年以降にPEファンド傘下から上場した企業の一覧になります。
中にはのれん割合が10%前後とリーズナブルな企業もいますが、それらよりも60%以上という時限爆弾を抱える企業の数の方が多いです。
PEファンドの光と影
以前、PEファンドは企業価値向上に向けてポジティブな影響を与えるという主旨の記事を書きました。
ガバナンスの整備。成長戦略の再考や実行支援。
一般株主の圧力を受けずに中長期的な戦略の実行。
PEファンドという産業の歴史が今も続いていることが証拠であるように、PEファンドは今では資本市場に必要不可欠な登場人物です。
一方で、"多額"ののれんとPEファンドは、トムとジェリーのように切っても切り離せない関係です。
PEファンド傘下から上場する企業に投資する場合は、そうした影の部分まで理解した上で投資を行うことが必要です。